続:独学生活。

通教記録帳ときどき雑記

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20080903

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20080404

[読了]そして殺人者は野に放たれる

そして殺人者は野に放たれる
そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)
著者:日垣 隆
出版社: 新潮社 (2006/10)
ISBN-10: 4101300518
ISBN-13: 978-4101300511
発売日: 2006/10

「心神喪失」の名の下で、あの殺人者が戻ってくる!「テレビがうるさい」と二世帯五人を惨殺した学生や、お受験苦から我が子三人を絞殺した母親が、罪に問われない異常な日本。“人権”を唱えて精神障害者の犯罪報道をタブー視するメディア、その傍らで放置される障害者、そして、空虚な判例を重ねる司法の思考停止に正面から切り込む渾身のリポート。第三回新潮ドキュメント賞受賞作品。(引用元:amazon.co.jp

かなり以前から図書館で延長延長で借り出し、少しずつ読み進め、ようやく読み終えることができました。
読むこと(@知ること)がとても辛かったです。

刑法第39条
心神喪失者の行為は、罰しない。
心神衰弱者の行為は、その刑を軽減する。


この本は、刑法39条に焦点を当てた内容です。
著者の日垣さんは、約10年をかけて取材し続けた結果をこの本にまとめられています。
その内容は想像を絶するもので、これまでのほほんと過ごしていた自分が恥ずかしくなりました。と同時に、知れば知るほど怖くなりました。

心神喪失者、心神耗弱者にまつわるさまざまな事件について、真実を詳細に書き綴られているのですが、最初は「本当にこんなことがあり得るの?」というキモチでいっぱいでした。けれど、次々でてくる内容に、これまで知らなかった真実を知り、被害者の思いを考えると胸が張り裂けそうです。

精神鑑定についての内容にも驚きです。
この精神鑑定では、安易に統合失調症と診断されており、そして、『「統合失調症でありさえすれば、いついかなる場合でも絶対的かつ無条件に心神喪失、責任無能力で無罪」と主張する精神科医もいる(p70)』そうで、これでは精神病の方はイコール凶悪犯罪に走る、という偏見を植え付けているだけですよね。
この件については時々ニュースなどでも取り上げられていますけど、これだけ安易な診断を下していれば、偏見を助長するのも当たり前だと思いました。
(注:本書では名称変更前の精神分裂症となっています。)

あと、覚醒剤や飲酒が絡んだ事件についても取り上げられています。
こちらは特に、読めば読むほど怒りがこみ上げてくる内容です。

この本を読み始めてからニュースをみていると、「心神喪失」「心神衰弱」「精神鑑定」という言葉が頻繁に使われていることに改めて気付き、これまでの無関心さを改めて痛感です。

その他、性染色体異常(XYY個体)についてのエピソードや、刑法40条が削除された理由など、本当に様々な事実が書かれているので、この本は機会があればぜひ読んで欲しいです。

この本の出版後に「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(心神喪失者等医療観察法)」が成立されているようです。
参考:医療観察法.NET ⇒ http://www.kansatuhou.net/

この本を読んでいて、「日垣さんはどうしてこれほどまでに39条にこだわっているんだろう」と思っていたら、あとがきで納得しました。
日垣さんは弟さんを理不尽に殺害されているそうで、さらにお兄様は長く統合失調症を患っているそうです。
とても強い信念を感じたのは、こういう背景からだったのだなと思いました。

20080903

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Comment

重たい話ですよね。。。。
刑法のお勉強は、まさに
人が人を裁くことの難しさの問題に
正面から向き合うことを要求します。
だからこそ、ややこしすぎるくらいの法理論が必要となるのですが。
人情としては厳罰化を求める気持ちがあり、その一方で尊敬する只木先生の授業を受けると、犯罪者の更生を求める社会でありたいとも思うし。難しいですが、法律を学ぶ醍醐味でもありますね。
なかなか手に取るのに勇気がいるような本だねぇ。確かに見極めが難しいところだろうし、精神を科学的立証することは困難だとは思うけれども、安易に診断されているのであれば問題だよね。そして、その人が統合失調症なら、無罪になった後の治療をしっかりとしてもらわないといけないわけだけど、どうなっているんだろうか...。

「ローマ人の物語」にも、当時、心神喪失者/心神耗弱者に対する判断をどのようにしていたかについて書かれてある部分があるよー。たしか文庫版の「終わりの始まり」のところだったかな。日本は弥生時代なのに、そんなに進んでるとは...と驚いたよ。

ところで、性染色体異常のお話も気になりまする。以前、専門家としては非常に興味深いところだけど、人権の問題や偏見を助長するなどのリスク(?)もあって難しい等のお話を聞いたことがある...。
実は、前に刑事裁判を傍聴したときの被告が、統合失調症だったんです。

犯行時の統合失調症の症状が、幻覚や妄想の症状がでる急性期だったかどうかの判断基準が論点(急性期じゃなければ、責任能力ありになるような話(多分))で、鑑定人への尋問でした。

その判断基準はほんとにはっきりしなくて、結局なんなの?という印象でした。とても難しいところなんでしょうね・・。加害者・被害者の気持ち・・苦しくなりそうだけど、僕もぜひこの本、読んでみたいです。
■ソムタムさん
本当に重たい話でした…。
というか、ニュースで精神鑑定や心神喪失、なんて言葉を聞いていたはずなのに、全く知らなかった自分がとても恥ずかしいです。
刑法総論を少しでも学んでいたからこそ、余計この本は考えさせられることが多くありました。
まさしく、ソムタムさんの仰るとおり刑法のお勉強の難しさを感じます。
わたしも人情的に殺人に対しては、厳罰化を求めたいのですよね。
ですが、一律に出来ない事情もあるよなあ…と考えたり。
只木先生の授業を通して、更生を求める社会、についてもしっかり考えたいと思います。

■姐さん
これは、確かに手に取るのに勇気がいりますが、もうほんとに姐さんにも読んでいただきたいです!姐さんの疑問部分が赤裸々に語られていて、これを知ると本当に憤りを感じると思います。
「ローマ人の物語」でも心神喪失者/心神衰弱者に対する判断について書かれているのですか。この本でも諸外国の対応について書かれていましたよ。外国の対応を見ていると、いかに日本が遅れているか。「ローマ人の物語」、ますます読もうと思います。
そして!
性染色体異常については、事例も含めてとても驚きましたよ。確かに、難しい問題ですよね…。でも、情報がほとんど出ていないというのがどうなのかなと思いました。
それらを含めても、ぜひ図書館リストに加えてやってください。

■こうさん
おお。こうさんが傍聴した時の被告が統合失調症だったのですか。しかも、凄く大事な局面だったようで…。
精神鑑定のお気軽さ…というか、曖昧さは本当に読んでいて苦しくなりましたよ。でも、現実を知る機会を得て、とても良かったと思います。
こうさんにもぜひ読んでいただきたいです。

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